生命に憐れまれて

身体に何本も、

神様に助けてもらえなかった印を刻んで

 

かわいそうな話ばかりしていた。

 

頭の中には見えない扉があって、

それはいつもは少しだけ空いているのだけど、

たまに、ぴったりと閉じてしまう。

 

そんなとき、私はいつも決まって、

惨めな1日を過ごすことになる。

 

低血圧だから、いつも憂鬱です。

 

ちゃんと決めた分の必要なものだけを買えたこと

それだけを積み重ねて、なんとか時間をやり過ごす

 

がりがりとうるさい

 

耳ばかりよくなって、

私はいつも眠れない。

 

ぎゅるぎゅると世界中の首切り台が回転して、

1人ずつ殺していきます。

 

この作業は、合理性を追求するべきでないね。

 

人の温かさが大切。

 

自動化なんてもってのほかです。

 

なんていって、ほら、

今日は誰をどれだけ殺すの。

 

生きるだけで減っていくもの、

なんだか、わかる?

 

世界中のもの、木や川、人間にだって値札が付いていて、

毎日みんな、好き勝手にその値段を書き換えている。

 

値札が付いていないのは、星座くらいなものだよって、

死んでしまった君は言う。

 

生存。

私たちの名前。

 

きゅるきゅると、

一等星が光る音をきいていた

 

からからと、

彗星が地球のきわを走り抜ける足音をきいていた

 

 

私の頬に青い草が触るのを、

なんでもないような気持ちで感じている

 

じきに、君が飴色のスープを運んできて、

わたしたち、そこで、おしゃべりをしながら、

少しだけ死んでいくのだ

 

夜空が思ったより近くて、

あの憂鬱すら、その深い真空に吸い込まれて、

私の体は少しだけ軽くなっていった

 

君は、どんな本が好きだった?

 

たくさん、話がしたい

 

わたしたち、結局、出会えなかったから

 

君は死んで、

私は、死んでしまった君のことを思い出したりしていた

 

君の好きな音楽や映画、君を形作った細胞の、

ほんの少しだけのこと

 

私はいま、雨の中、

自己肯定ばかりに気を取られて、

何も聞こえません

 

一等星は息を潜め、彗星は世界の裏側で眠りについています

 

私の体は、日に日に鈍くなって、

もう、腐る細胞すらないのに、

息をしている

 

輪の中で生きなければいけないよ

 

と、誰かが言って、

わたしは、その通りだと思った

 

太陽が、わたしの体に 

凡庸

という言葉を塗り込んで沈んでいく

 

夜だけ数えて、わたしは、君に会いたかった

 

きっと、話は合わないし、

君は、賢すぎるから、

わたしのことなんてすぐに飽きてしまうけれど

 

だからこそ、わたしは君に会いたかった

 

会って、けいべつされたかった

死んでまで、絶望していたいね

 

きゅるきゅると、からからと、

おとはなく、

誰かがわたしの頬を撫でていたことすら、

忘れていきている

 

わたしは、きみがすき

きみに、絶望されて、いきていたい

聡明で、美しく、若い女の子から順に殺していく世界で、

聡明でも、美しくもなかったわたしは、いつもその輪から弾き出されていた。

 

酸素は毒だから、わたしはいつもなるべく息をしないように生きていた。

 

細胞が死滅して、腐臭を放つことを老いと呼ぶなら、

どうして生きたいなんて思えるの。

君が生きているだけで、わたしの身体中の水分が腐っていく。自尊心が壊され、少しだけ死んでいく。君が生きているだけで。

 

音楽を聴いている。君の知らない音楽を。

 

分からないことで可愛がってもらえた日々を、

懐かしく思えたら、

それは幸福なこと。

 

腐臭を放つ時間を、愛する人と手を繋いで生きていけたら、

それは幸福なこと。

 

死ねと思いながら生きる時間を、

理解できない君は、

幸福なんだ。

 

いきて、しんで、いきて、しんで

 

私たちは少しだけ、腐る。

陶器

世界で一人だけで苦しんでいるような気持ち

 

になってる

 

細胞と細胞の隙間に、

 

私は、心の底からの侮蔑を 注ぎ入れてあげるからね

 

からだじゅうの水分が全て、

愛情でできているフランス人形

 

わたしたち、すこしも、

かわいそうなんかじゃなかったよね

君は言葉だけがつよい

死んでしまった君が、死ぬ直前に見たせかいの美しさが、

このせかいのほんとうの美しさなら、

私はきっと、死ぬまでそれを知ることはできない

 

 

年を重ねれば重ねるほど、細胞が腐り落ちてゆく

遠くの夕立の湿り気を帯びた凪が身体を愛撫する感触にすら、私は気がつかない

私だけが、気がつかない

 

憎しみとも優しさともつかない感情で器を満たして、

ゆらゆらと揺れる遠くの蜃気楼を冷やしている

 

さわさわと、繁る若葉が鳴いています

 

夏に生まれた子供だけを、世界が祝福しています

 

緩やかに死に向かう

 

君のポエジーは、まだあのビルの屋上に

 

魂から憂鬱だけを引き剥がして、恋愛ばかりしていたい、夏に

 

君はいない、最初からいない

 

さわさわと、繁る若葉がないています

 

 

 

苦しみだけが先走って、死にたさだけがわたしの心に残されている。

青春の無念も、真夜中の諦念も、幸福と対比させることができないほど臭気を放つから、せめて、それらを抱きしめて眠る。

美しさが、もしもほんとうに、世界中にある正しさを端から端まで殺して回っても余るほどのものだとしたら、死んでしまった女の子たちも、戻って来てくれるのでしょうか。